「あはれ」の「あ」は、ため息の「あぁ」—石山先生に聞く、古典を教える意味

「あはれ」と「をかし」は、どう違うのか。なぜ古文を音読するのか。そして、そもそも古典は何のために学ぶのか。
『高校古典文法 パターンドリル 超基礎編』の著者・石山貴裕先生に伺ったのは、教材の使い方を超えた「国語を教えること」そのもの。キーワードは、「身体感覚」「内面化」「星座」「流れ」でした。
根岸大輔|小論文塾メイジャーステップ 2026.09.18
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こんばんは、シン・中の人、一ノ瀬(@mAjorstep_jp)です。

こちら東京は記録的な日照不足で、曇りや雨の日が続いています。我が家には乾燥機がないため、せっせとコインランドリーに通う毎日です。これが結構体力的に辛い&地味な出費になっており、腹いせに崩した小銭でハーゲンダッツを買い、子の刻にいただきました。後悔はありません。

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さて、前号に引き続き、文英堂から刊行された『高校古典文法 パターンドリル 超基礎編』について、著者の石山貴裕先生にお願いをし、アンケートにお答えいただきました。その内容についてお届けします!

前号では、実際の教育現場ではどのように使うのが効果的か、具体的な活用法をお届けしました。まだの方はぜひ!

そして今号では少し話を広げ、石山先生の”教育哲学”についてお届けします。

そもそも、古典を教えるとはどういうことなのでしょうか。高校国語の科目構成が変わり、「言語文化」という科目のなかで古文・漢文を扱う現在。
生徒から、

「古文って、何のためにやるんですか?」

と聞かれた経験のある先生も少なくないのではないでしょうか。

そこでアンケートの後半では、石山先生が国語の授業で大切にしていることを伺いました。

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「あはれ」の「あ」は、ため息の「あぁ」

Q.古典を教えるうえで、大切にしていることは何ですか?

(石山先生):──古典に限ったことではないのですが、私自身一つキーワードにしているのが「身体感覚」です。授業の第1回では、必ずその話をします。
たとえば、「をかし」と「あはれなり」。どちらも「趣深い」と訳されることがありますが、生徒は違いを理解していません。

「あはれ」の「あ」は、「あぁ」というため息の音です。
人間は、自分の心に響くものがあったとき、その感覚が声として出る。
その「あぁ……」というため息が「あはれ」の「しみじみ」です。

一方で「をかし」。現代でも「おかしい」と言います。何かを面白いと思ったとき、人は笑います。授業中は大声では笑わないかもしれないけれど、思わずニヤッとしてしまう。その微笑んでいる身体の感覚が、「をかし」なのです。

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古文単語を学ぶとき、何も考えずに意味を暗記していました。ところが、石山先生のお話で、それまで紙の上に並んでいた意味が、急に身体を伴った言葉になってきたではありませんか!
説明を受け、「確かにそうだ…」と、まさに身体をもって深く腑に落ちました。きっとこの先も忘れることはないと思います。まさに”身体感覚”!!!

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昔の言葉を知らなければ、今の言葉もわからない

Q.そうした「身体感覚」を捉えるために、なぜ古典を学ぶ必要があるのでしょうか。

(石山先生):──現代語だけで言葉を捉えようとすると、その言葉の根っこにある感情や感覚までは、なかなか見えてきません。特に、昔から使われてきた和語には、人がどのように感じ、どのように身体で反応したのかという感覚が残っています。そうした言葉本来の感覚を知るためには、過去の言葉にさかのぼって考えることが必要です。

たとえば漢文では、「嗚呼」を「あぁ」と読みます。「あぁ」という声は、人が驚いたり、心を動かされたりしたときに、思わず口から出るものです。そのため、「嗚」や「呼」には口偏が使われています。

このように、言葉の一番根っこには、人間の感情や身体の反応があると考えています。古典を学ぶことは、そうした言葉の奥にある感覚に触れることでもあるのです。

言葉のルールを、自分の中に内面化する

Q.古典や古典文法を学ぶことは、現代を生きる私たちが言葉を理解し、表現することに、どのような意味を持つのでしょうか。

(石山先生):──前にも書いたように、言葉の根底には、声や表情など、身体を通して表現される感覚があると考えています。

その感覚を、自分が今を生きるなかで、どのように解像度の高い言葉へと変換し、他者に伝えていくのか。さらに、受け手の解釈に委ねるだけではなく、自分の意図をできる限り誤解なく伝えるには、どうすればよいのか。
国語を学ぶことには、そうした課題に向き合うという意味があると思います。
そのなかで、古典文法を学ぶというのは、一つの「ルール」を学ぶということです。

言葉を使う段階は、大きく三つあると考えています。

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