解決策が解決に至らない小論文! その理由とは学校教育にあり

小論文の結論が「意識を変えよう」「みんなで協力しよう」で止まってしまう生徒を、どのように指導すればよいのでしょうか。社会問題を扱っているはずなのに、提言のスケールが小さくとどまってしまう答案は、現場の教師が直面する典型的な悩みです。本記事では、そのような解答を書く生徒の心理的背景について、指導歴30年のベテラン、根岸先生へのインタビュー形式で解説します。
根岸大輔|小論文塾メイジャーステップ 2026.02.27
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こんばんは、中の人(@mAjorstep_jp)です。久しぶりに雨が続いていますね。花粉症の人には春の雨はとてもよい知らせです。(おすすめの花粉対策グッズがあったら教えてほしいです。)また、先日打ち合わせを行いました。まだ発表できませんが、来年度も面白いことになりそうです。早くお知らせできないかとうずうずしています。ぜひ楽しみにしてくださいね。

さて、今回は、小論文指導の現場で非常によく出会う悩みについての質問を取り上げます。

小論文指導についてです。一文ごとのねじれや記述の乱れはなく、構成も一応テンプレにならっているが、社会的なスケールが非常に狭いというパターンをどう指導したらいいでしょうか。 例えば、商品作物生産の過程での搾取や環境破壊についての小論文で、「感謝して食べよう」みたいな結論になっているというような。

ニュースレター会員様からのご質問

ご質問ありがとうございます。ご質問をいただけると、ニュースレター会員の皆さんがどのようなことでお困りなのかを知る機会となり、大変嬉しいです(XのリプライやDMをお待ちしています)。

それでは早速、根岸先生にインタビューします。

***

中の人(以下(中)):根岸先生!  小論文・現代文の指導スキルを学ぶ会の会員様からこのようなご質問が届いています。私も添削していて、このパターンに陥っている生徒さんの答案って少なくありません。どうしたらいいかご教授ください。

根岸先生(以下(ね)):内容や構成、文法的な乱れは少ないものの、議論のスケールが極端に小さく、社会問題を扱っているはずなのに結論が「気持ちの問題」に終始してしまい何の解決策にもなっていないというケースを、どのように指導すればよいですか?、ということがご質問の本旨ですね。

(中):はい。具体例として挙げられていたのは、商品作物の生産過程における搾取や環境破壊をテーマにした小論文で、最終的な結論が「感謝して食べることが大切だ」といった内容に収束してしまうという状況ですね。構成の仕方やデータの提示の仕方はできていても、最後のまとめが「え? それで終わり?」となってしまいます。

(ね):論点としては決して間違ってはいませんが。しかし、社会問題の分析としては明らかにスケールが小さく、課題の構造や制度的背景に踏み込めていない、という典型的なパターンです。

(中):問題分析や問題解決のスケールが小さい場合って他にもありますよね。小論文指導をしていると、次のような結論に頻繁に出会います。

・環境問題を解決するには、私たち一人ひとりの意識改革が必要である。
・新型コロナウイルス感染症を克服するには、国民全員が協力し合うことが大切だ。
・地域紛争は当事者同士が話し合えば解決できるはずだ。

(ね):あるあるですね。中の人が挙げた例も然り、中の人もこの質問者さんも感じている共通の違和感、「スケールが小さい」と感じる部分の原因はここではないでしょうか。率直な表現で言えば、要は「そんなんで解決するなら、もうとっくに解決しているでしょ」という話です。

(中):そうです。まさに私の感じていたことを言語化するとそうなります!

(ね):しかし、生徒がこのような結論を書くのは、決して能力不足や努力不足が原因ではありません。むしろ、これまで受けてきた教育の影響が非常に大きいということを理解しなければなりません。

(中):これまで受けてきた教育の影響が、小論文にあらわれている……?

***

学校教育における「問題解決」の文脈

(中):根岸先生、どういうことでしょうか。

(ね):ぜひご自身が受けてきた教育や行ってきた指導を含めて、教育の構造を振り返ってみてください。学校教育、とくに初等・中等教育のなかで、子どもたちは次のように指導されてきました。

・問題が起こったら話し合って解決しよう。
・間違えたら謝り、相手は許すことが大切だ。
・クラスのみんなで力を合わせて頑張ろう。

学級経営や人間関係の教育としては、これらは極めて重要な指導内容です。

(中):ああ、私も教員時代に何度も指導したことがあります。

(ね):そうでしょう。でも、誤解しないでいただきたいのが、これは決して悪いことではありません。子どもたちが社会性や道徳性を身につけるためには不可欠であり、教師としても当然行ってきた指導でしょう。

(中):おっしゃる通り、これらの言葉を封じられたらクラス経営できませんね。

(ね):そうでしょう。先生方が熱心にご指導されてきたこと。つまり、生徒が「意識」「気持ち」「協力」といったレベルで問題解決を語るのは、彼らが真面目に教育を受けてきた証拠でもあります。

***

小論文と道徳の決定的な違い

(中):なるほど。学校教育で問題解決する際に培ってきたマインドが作文用紙にダイレクトにあらわれているのですね。

(ね):先生方が口すっぱくご指導されてきたからですね。とても心豊かでよいことですが……

(中):小論文では通用しませんよね。

(ね):はい。ですからここで指導者が明確に伝えるべきことがあります。

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