「AIの答えはどこまでも無個性的」―相澤理先生が語る、小論文に必要な「自分だけの問い」

AIで答案を添削する時代に、私たちは何を教えるべきなのか。「AIは信用していない」と語る相澤理先生。しかし、その真意は単なるAI否定ではありませんでした。AIに答えを与えさせることの危うさ、そして生徒自身が考えることの意味。11月21日のイベントを前に、小論文指導の本質を伺いました。
根岸大輔|小論文塾メイジャーステップ 2026.11.06
サポートメンバー限定

こんばんは、シン・中の人、一ノ瀬(@mAjorstep_jp)です。
先日、小学校の校庭開放見守りボランティアに行ってきました。高学年の子どもたちが何やら楽しそうにおしゃべりしているので聞き耳を立てると、「記者会見ごっこ」というものをやっていました。「俺、謝罪する人やる」「じゃあ私は記者」「俺はカメラマン」という具合で、どうやら「謝罪会見」をしているようです。「きのこの山派だったのに、たけのこの里を食べてしまい、申し訳ありませんでした!」と、世界一平和な謝罪を目の当たりにできました。流行っているらしいです。「謝罪会見みたいに編集できるアプリもあるよ!」と有益な情報もゲットできました。

***

さて今回は、きたる11月21日のイベント「小論文”プロがガチ解き”ライブ」のゲスト講師である相澤理先生に、イベントに先駆けてご登場いただきます!

イベント当日は、相澤先生に実際の大学入試の小論文に取り組んでいただき、その答案をAIに診断してもらう予定です。

そこで今回は、そもそも相澤先生はAIに対してどのような考えをお持ちなのか、普段のお仕事ではAIを活用されているのか、といったことを根岸先生と一緒に伺いました。

実は私自身、以前から相澤先生のご著書を愛読しており、インタビュー当日はかなり緊張していました。しかし、そんな緊張もすぐにほぐれるほど、相澤先生は気さくに、そして一つひとつの質問に真摯に答えてくださいました。お話を伺ううちに、ますますファンになってしまいました!

この記事を通して、相澤先生のお人柄や教育に対する熱い思いが、皆さんにも伝わればうれしいです。

***

AIは信用していません

(根岸先生)(以下(ね)):相澤先生は普段お仕事にAIを使うことはありますか?
(相澤先生):下調べくらいですね。
今年は総合型選抜の指導で、理系の受験生が多いのですが、生徒が「これをやりたい」「あれをやりたい」と言ってくるんだけど、僕の専門外のことも多い。
だから、まずはChatGPTに「これ何?」と聞いたりしていますね。今どういう課題があるのかを調べてもらって、そこから壁打ちをして、自分の疑問を深めています。
仕事で使うとしたら、下調べが一番多いですね。

(ね):教材を作ったり、文章を書いたりする際には使わないですか?

(相澤先生):アウトプットには、ほぼ使わないですね。信用していないから。
あとは、僕自身がアウトプットすることを好きだから、AIに任せたくないというのもあります。

でも、自分がよく知っている分野についてAIに聞いてみると、そもそも集めてくるデータがおかしいことがあるんですよ。

(ね):たとえば、どのようなことですか?

(相澤先生):以前、「対比」を説明する教材を作ろうと思って、例文をAIに探させたことがあるんです。そうしたら、出てくるものが全部「対立」なんですよ。
対立と対比は違うでしょう。
対比するには共通点が必要なのに、単にAとBが違うと言っているだけのものを持ってくる。
それで、ああ、世の中では予備校講師も含めて対比をこういうふうに誤解しているのかと、勉強にはなりましたけどね(笑)

教材作成にAIを使えるかと思ったけれど、使えませんね。だから現状では下調べに使うことが多いです。

***

AIが小論文を添削することは、本当に生徒のためになるのか

(ね):最近は、生徒が自分で書いた小論文や志望理由書を、先生に提出する前にAIで添削することも増えてきましたよね。

(相澤先生):そうなんですよ。「AIにも見てもらいました」って持ってくる生徒がいるんです。

でもね、AIのアドバイスを見ると、とにかく多いんですよ。

800字の志望理由書に対して、改善点が100個くらい並んでいたりする。「これも書いた方がいい」「あれも書いた方がいい」と。

でも、それを全部書いたら1万字を超えるでしょう(笑)

そもそも、100個のポイントを全部盛り込んだら合格答案になるのかというと、そういうことでもない。

(ね):確かに、AIは改善点をたくさん指摘してくれますよね。

(相澤先生):でも、僕が大事だと思っているのは、全部教えないということなんです。

小論文を添削するときにも、「こういう考え方もあるよ」「この部分は別の視点からも見られるよ」とは言うけれど、こう書きなさいということまでは言わない。

以前はもっと具体的に改善点を示していたんです。でも、指導のなかにリライトを組み込むようになってから、やめたんですよ。

もう一度考え直して、もう一度自分で書かせる。それが大事だから。

だから、AIが添削して正解らしいものを全部示すことが、果たして本当にいいことなのかと思うんですよ。

それをやってしまうと、生徒自身が考えなくなってしまうでしょう。

***

AIには書けない「自分だけの文章」とは?

(ね):AIが文章を直してくれるのは便利ですが、AIに任せきりにすると、どうしても似たような文章になってしまいますよね。

(相澤先生):そうなんですよ。どこまでいっても、AIが出してくる答えというのは無個性的なんですよね。誰でも書けてしまう文章なんですよ。

だから大事なのは、

AIが書いた文章を人間らしく直すことではなくて、自分で書いた文章をAIに直してもらって、そこからまた自分で考えて書き直すことなんです。

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、1386文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

読者限定
小論文「プロがガチ解き」ライブ 【お申し込み受付中】
読者限定
参考書・問題集はどう選ぶ?――「苦労して解ける問題」を「スムーズに解け...
サポートメンバー限定
全国公立小論文の旅~芸術文化観光専門職大学(後編)~
読者限定
失敗の原因を能力のせいにしない――成長につながる学習方略
サポートメンバー限定
全国公立小論文の旅~芸術文化観光専門職大学(前編)~
誰でも
小論文「プロがガチ解き」ライブ開催!
読者限定
進路指導のミカタ。専門職大学とは?
サポートメンバー限定
全国公立小論文の旅~東北農林専門職大学~